きみとの出会いはぼくが中学生になった頃。
ピカピカに光っていてカッコいいワインレッドのボディー。当時としては最新のMDが聞けるオーディオ機器、鍵穴に差し込まなくても鍵を開けたり閉めたりできる。天井のスイッチを押せば天井の一部が開き空が見える。前のにはなかったところどころにあるエナメル質の黒ヒョウ柄のデザインも気分が良い。
家族旅行は大体いつもきみと一緒だった。那須高原に行ったり、奥多摩に釣りをしに行ったり、母方の田舎の栃木に行ったり。
旅行の出発は大体いつも夜中で、その時は唯一夜更かしが許されており、すごくワクワクしておりました。運転に集中したい父とあまり中身の無い話をしている母を遮り、強引にしりとりを始める。。しかし、高速道路の単調な路になるといつのまにか寝てしまい、目的地に到着したところでいつも起こされていた。
後ろの席にいつも座っていたぼくは、「早く大人になって運転したい!!」と心から思った。
大学生になり免許をとった。
1番最初のドライブの助手席はもちろん彼女! ・・・ではなく、父。
夜中に父の提案で急遽ドライブに!笑
最終的にはなぜか群馬まで行っていた。。
免許講習ではマニュアルを取得したため、オートマの運転はそれほど難しくはなかった。
が、僕のダメなところはすぐにウトウトしてしまうこと・・・。
運転をしていて1番怖い時期、2年目突入~
だいぶ運転に慣れてきたぼくは、夜中、緊張感もあまりなく運転。
案の状、信号待ちをしていた時にウトウトしてしまい、ブレーキに乗っていた右足がアクセルの方に・・・
信号待ちをしている前の車にぶつかってしまい、事故を起こしてしまった。
お互い運転手はケガはなかったが、きみはバンパーが外れ、ナンバープレートはボコボコになっていたね。
その他にもガードレールには擦るし、ドアを開ける時には隣の車にもぶつけるしで、ひどい状態。
こんなにひどい運転をするのはぼくか、ルパンくらいなのではないだろうか・・・。
そんなひどいことをしていたのに、それでもきみはぼくの世界を広げてくれた。
ふらっと埼玉の温泉に出かけたり、千葉の友人に会いに行ったり、、、スノボーをしに長野や群馬、伊豆の海・・・。
どこに行っても楽しかった。
しかし、社会人になり、ぼくの周りで自分の車を持つ友人が増えた。
中には親からの支援があったりして、ベンツやレクサスに乗っている友人も・・・
「かずの乗ってるのってなんだっけ? 三菱のディオン?? 聞いたことない!笑」
「もっとカッコいいの買えばいいのに~」
ぼくは「まぁ~親の車だし~」、「逆に誰も乗ってないのが良いんじゃん!」とか言っていながらも
ちょっときみに乗っているのが恥ずかしいという気持ちにちょっとなっていて、そしてちょっと嫌いになった。
仕事が忙しく、仲が良かった大学の友人とは休みが合わずだったので、遠出することもなく、もっぱらきみに乗る機会は減った。
ある時、タイトルは忘れたが、ボロボロのクラシックカー(mini?)が出てくる探偵映画を観た。
その中のセリフで、「どんなに古い物でもちゃんと大切に使ってやれば、いつでも力を貸してくれる最高のパートナーになる」みたいなことを言っており、「ふ~ん」と思いながらもきみのことを思い出した。
確かに、土砂降りの雨でも、きみはちゃんと走ってくれた。
彼女に振られた時、帰り道爆音で好きな音楽を流そうとしたら、父のMDの中の井上陽水が爆音で掛かった。思わず笑ってしまった。。
本当はきみが笑わせてくれたの??
楽しかった思い出、悲しかった思い出、びっくりした思い出、色々な思い出の中のいつも端っこにきみがいたのを思い出した。
しかし、今月、車を買い替えることになった。
色々なところにガタがきたようだ。
実はもう何年も前からギリギリで何とか車検を通っていたみたいだが、今回はもうさすがに・・・そういうことのよう。
たかが車だけど、ぼくの青春をともに過ごしてきたと言っても過言ではない。。
キレイとは程遠いボロボロの身体だけど、高い車ではないけど、人気は全然ないけど・・・
ぼくにとっては、これから先もずっと1番の最高の車だよ。
約15年間本当本当に本当にありがとう。そんでお疲れさま。
皆さんは物を大切にしてますか??
物にも魂があるようです。
心の中ででも良いので、ありがとうと言ってみてはいかがでしょう?